
三菱が2025年7月25日に発表したASEAN向け新型SUV「Mitsubishi Destinator」は、7人乗りのファミリーカーでありながら、“ラリーの血統”を感じさせる走行制御を搭載しています。特に注目されているのが、かつてランサーエボリューションVIIに採用された“Gravel”や“Tarmac”といったドライブモードが、現代的なSUVに再び導入された点です。









デスティネーターとは何者か?
Destinatorは、既存のXpander(MPV)やXforce(5人乗りSUV)の上位に位置付けられる新型クロスオーバーSUVです。ボディサイズは全長4,680 mm、全幅1,840 mm、全高1,780 mmとミドルクラスに相当し、ホイールベースは2,815 mm。1.5Lターボエンジン(163 PS/250 Nm)とCVTを組み合わせ、駆動方式は前輪駆動となります。価格帯は約300万円前後で、CセグSUVの中では比較的リーズナブルな価格設定です。
5ドライブモードの詳細
Destinatorには以下の5つの走行モードが備わっています:
- Normal:通常走行に最適。バランス重視のスロットル応答とシフトマップ。
- Wet:濡れた路面での安全性を高める。トルク制御を抑え、スリップ防止。
- Gravel:未舗装路でのトラクションを最適化。ホイールスピンを許容しながらも安定性を確保。
- Tarmac:舗装路でのスポーツドライビング向け。ステアリングとスロットルの応答性が向上。
- Mud:ぬかるんだ地面での脱出力を重視。トルクカットとブレーキ制御を連動。
これらはAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を含む統合制御により、走行安定性を最適化する仕組みです。
ルーツはランサーエボVIIとWRC
2001年に登場したランサーエボリューションVIIは、Gravel/Tarmac/Snowというモードを持ち、WRCでの経験を公道に反映させたモデルでした。Destinatorもその思想を継承しています。ただし、AWDベースだったエボとは異なり、DestinatorはFWD車。その代わり、AYCで前輪左右の駆動トルクを緻密に制御することで、旋回性能を高めています。
駆動方式の違いとその意味
エボVIIが搭載していたのは、前後トルク配分を制御するACD(アクティブセンターデフ)と、左右トルクを制御するAYCの組み合わせでした。一方のDestinatorは、AYCのみを搭載したFWD車。これはコストと重量を抑えるための合理的な選択でありながら、旋回性能に関してはエボ譲りの要素を持つ点が特徴です。
パワートレインとシャシーの基本性能
搭載されるエンジンは4B40型の1.5L直列4気筒ターボで、最高出力163 PS、最大トルク250 Nmを発生します。トランスミッションはCVTで、疑似8速ステップ制御を採用。最低地上高は214 mmと、一般的な舗装・未舗装混在のASEAN地域に適した設定です。
足回りは前マクファーソンストラット、後トーションビームという構成で、ブレーキは前後ディスクを採用。さらに、安全運転支援にはMi-PilotとしてADAS機能(衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報、ACCなど)も用意されています。
ライバル比較と市場での立ち位置
デスティネーターの競合車としては、ホンダCR-V、トヨタラッシュ、日産X-Trailなどが挙げられます。CR-VやX-Trailはハイブリッドや高出力エンジン、AWDを持つ上級志向ですが、Destinatorはその中間に位置する“手が届く7人乗りSUV”として独自のポジションを築いています。
まとめ:ラリーの血はSUVにも流れるのか?
Destinatorは、FWDという制約の中でAYCとドライブモード制御によって“エボ譲り”の走りを再現しようとしています。本格的なスポーツ性能ではエボには及ばないものの、未舗装路や雨天時における挙動の安定性という点では、実用面で非常に大きなメリットがあります。
また、家族用途・アウトドア・悪路走破という多様なニーズを、手頃な価格で満たす点でも魅力的な存在です。これまでSUVに「走りの楽しさ」を求めてこなかった人々にも、新しい選択肢を提供してくれるモデルといえるでしょう。

